先進事例

コージェネ大賞2023 理事長賞

次世代を先取りする「CO₂フリー水素エネルギー利用システム」をオフィスで実運用
~清水建設北陸支店新社屋への導入事例~

石川県金沢市|
清水建設株式会社

概 要

水素社会の普及・波及の両立を目指し、社会に先駆けて「CO₂フリー水素エネルギー利用システム」を建物内に実装して実運用を行った。
本システムは蓄エネルギー型のコージェネであり、産業技術総合研究所とともに2018年度にコージェネ大賞技術開発部門理事長賞を受賞した「電気・熱の最適マネジメント実現するCO₂フリー水素エネルギー利用システムHydro Q-BiCⓇ」がベースである。本施設では通常時は電力ピークカットや必要時に応じた使用とし、災害時等にはBCP電源の自立供給を行う運用としている。機器仕様は以下とした。

  • 燃料電池:100kW
  • 水素製造装置:10Nm³/h
  • 水素貯蔵装置:1,350Nm³ (100kWh×20台 計2000kWh相当) 
  • リチウムイオン蓄電池:100kWh

併せて、システム排熱を給湯設備の予熱や空調温水に利用して総合効率を高めるように、スマートBEMSにて制御を行っている。

原動機等の種類 燃料電池
定格発電出力・台数 100kW×1台
排熱利用用途 空調(暖房、除湿再熱)、給湯
燃料 水素
逆潮流の有無 無し
運用開始 2021年7月
延床面積 4,224m²
一次エネルギー
削減率
13.10%

コージェネが供給できる電力・熱を商用系統から給電・熱源機から熱供給 した場合と比較した時のエネルギー削減率

導入経緯

建設業界では、2050年カーボンニュートラルの実現を見据え、ZEB建築が推進されている。その中で、ZEB Readyを実現した建築事例は増えているが、Nearly ZEBや『ZEB(ネット・ゼブ)』など、より高い環境性能を目指す事例も増えてきている。しかし、省エネルギー技術だけで高い環境性能を確保するには限界があるため、太陽光発電設備などの創エネルギー設備を大容量として併設する必要がある。一般的なオフィスビルなどで実装する太陽光発電設備の容量を大きくした場合、休日や中間期等の電力需要の少ない時間帯・時期では太陽光発電電力を建物で消 費し切れず、大量の余剰電力が発生することが予想される。この余剰電力を蓄エネルギー設備により蓄えることができれば、平日の電力需要の大きい時間帯のピークカットや、天候により発電量が変動する太陽光発電のエネルギー安定供給などに活用することが可能になる。一方、IT化 の促進や事業・生活を継続するための電源確保の重要性が高まっている中で、阪神淡路大震災、東日本大震災、北海道地震、大型台風など自然災害に起因する大規模停電の事象が増えている。
以上の背景を踏まえ、水素エネルギー利用による脱炭素化・カーボンニュートラルを見据えて、建物付帯型水素エネルギー利用システム『Hydro Q-BiCⓇ』を建物内に実装し、建築業界における利用エネルギーの転換を前進させる大きな第一歩を踏み出すこととした。

特 長

安全かつ合理的な水素貯蔵

  • 一般的な水素吸蔵合金は水素を繰返し吸放出することで微粉化し着火するが、本オリジナル合金は吸放出を繰返しても微粉化しにくく着火せず総務省の危険物データベースにて非危険物として登録済。
  • 高圧ガス保安法に抵触せず、保有空地等のスペースが不要。
  • 顧客のニーズに応じた各設備容量を実装することが可能(自由な設備容量設定が可能)。
  • 水素貯蔵合金タンクにおける吸放出は、地下水熱による冷却と、燃料電池からの排熱による加熱のみで運用可能であり、大幅な省エネを実現。

FIT制度からの自立

  • 『Hydro Q-BiCⓇ』は卒FIT事業者の建物に後付け設置が可能。
  • 貯蔵されたエネルギーは雨天時や夜間など必要とされる適切なタイミングで利用し、エネルギー自立型建築物・再エネの地産地消を実現。

太陽光発電余剰電力の回収 -エネルギー自立型建築物の実現-

  • 2022年度太陽光発電電力のうち、水素製造、蓄電池充電、売電に充てられた分が、建物で消費できなかった余剰電力であり、4~8月に集中、最大(5月)は6,000kWh強、年平均で総発電電力量の約20%に相当。その余剰電力のうち30%が水素、20%が蓄電池に蓄エネされ、エネルギー自立型建築物・再エネの地産地消に貢献。
  • ゴールデンウィークに貯めた水素貯蔵分が梅雨時期の発電に、夏期休暇に貯めた水素貯蔵分が秋雨時期の発電に、10月の中間期に貯めた水素貯蔵分が冬期の発電に使用され、従来難しかったエネルギーのシーズンシフトが可能。

電力供給会社からの夏季節電要請に対応

  • 強制的に蓄電池、燃料電池を運転し、2022年に節電要請に対応実績あり。

災害時の建物BCP電源対応 -化石燃料からのエネルギー転換-

  • 『Hydro Q-BiCⓇ』でのグリーン電力供給による次世代BCP電源の在り方を示すことで、従来の化石燃料によるBCP電源からのエネルギー転換がスムーズに実施可能。(BCP電源容量:計1,000kWh)
  • 災害時において、太陽光発電電力の「直接利用」を優先し、太陽光発電電力のみで不足する場合に、水素利用蓄エネルギーシステムを利用、余剰電力が生じた場合は蓄エネルギーシステムにエネルギー貯蔵する
システムフロー図
システムフロー図
設備写真
システムフロー図
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