水素社会の普及・波及の両立を目指し、社会に先駆けて「CO₂フリー水素エネルギー利用システム」を建物内に実装して実運用を行った。
本システムは蓄エネルギー型のコージェネであり、産業技術総合研究所とともに2018年度にコージェネ大賞技術開発部門理事長賞を受賞した「電気・熱の最適マネジメント実現するCO₂フリー水素エネルギー利用システムHydro Q-BiCⓇ」がベースである。本施設では通常時は電力ピークカットや必要時に応じた使用とし、災害時等にはBCP電源の自立供給を行う運用としている。機器仕様は以下とした。
併せて、システム排熱を給湯設備の予熱や空調温水に利用して総合効率を高めるように、スマートBEMSにて制御を行っている。
原動機等の種類 | 燃料電池 |
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定格発電出力・台数 | 100kW×1台 |
排熱利用用途 | 空調(暖房、除湿再熱)、給湯 |
燃料 | 水素 |
逆潮流の有無 | 無し |
運用開始 | 2021年7月 |
延床面積 | 4,224m² |
一次エネルギー 削減率 ※ |
13.10% |
コージェネが供給できる電力・熱を商用系統から給電・熱源機から熱供給 した場合と比較した時のエネルギー削減率
建設業界では、2050年カーボンニュートラルの実現を見据え、ZEB建築が推進されている。その中で、ZEB Readyを実現した建築事例は増えているが、Nearly ZEBや『ZEB(ネット・ゼブ)』など、より高い環境性能を目指す事例も増えてきている。しかし、省エネルギー技術だけで高い環境性能を確保するには限界があるため、太陽光発電設備などの創エネルギー設備を大容量として併設する必要がある。一般的なオフィスビルなどで実装する太陽光発電設備の容量を大きくした場合、休日や中間期等の電力需要の少ない時間帯・時期では太陽光発電電力を建物で消 費し切れず、大量の余剰電力が発生することが予想される。この余剰電力を蓄エネルギー設備により蓄えることができれば、平日の電力需要の大きい時間帯のピークカットや、天候により発電量が変動する太陽光発電のエネルギー安定供給などに活用することが可能になる。一方、IT化 の促進や事業・生活を継続するための電源確保の重要性が高まっている中で、阪神淡路大震災、東日本大震災、北海道地震、大型台風など自然災害に起因する大規模停電の事象が増えている。
以上の背景を踏まえ、水素エネルギー利用による脱炭素化・カーボンニュートラルを見据えて、建物付帯型水素エネルギー利用システム『Hydro Q-BiCⓇ』を建物内に実装し、建築業界における利用エネルギーの転換を前進させる大きな第一歩を踏み出すこととした。
安全かつ合理的な水素貯蔵
FIT制度からの自立
太陽光発電余剰電力の回収 -エネルギー自立型建築物の実現-
電力供給会社からの夏季節電要請に対応
災害時の建物BCP電源対応 -化石燃料からのエネルギー転換-