トヨタ自動車では、生産設備の最適化やエネルギー効率の向上により工場のエネルギー消費量を徹底的に削減するとともに、再生可能エネルギーの導入と水素の有効利用により、「工場CO₂ゼロチャレンジ」というアクションプランを通して2035年にすべての生産拠点でカーボンニュートラル達成を目指している。
その中で、本プロジェクトでは、燃料電池自動車(以下FCEV)向けの燃料電池スタック等を生産している本社工場パワートレーン3号館において、水素混焼ガスエンジンと燃料電池の2種のコージェネを導入し、廃水素と排熱を適材適所で使い分けながら有効活用するとともに、コージェネ排熱を温熱だけでなく冷熱としても徹底的に利用する先進的なシステムの構築を実現した。
本プロジェクトを通して、「水素社会実現に向けた仲間づくり」と「水素利活用技術・技能の手の内化」を図りながら本成果を他の工場に横展開するとともに、他事業者の生産拠点のカーボンニュートラル達成に貢献できるよう「水素発電パーク」として見学者を積極的に受け入れている。
原動機等の種類 | ガスエンジン、燃料電池 |
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定格発電出力・台数 | 400kW×1台 100kW×1台 |
排熱利用用途 | 空調 |
燃料 | 都市ガス・水素、水素 |
逆潮流の有無 | 無し |
運用開始 | 2022年4月、2021年1月 |
延床面積 | 69,486m² |
一次エネルギー 削減率 ※ |
32.1% |
コージェネが供給できる電力・熱を商用系統から給電・熱源機から熱供給 した場合と比較した時のエネルギー削減率
需要拡大による水素社会実現の牽引
トヨタ自動車は、エネルギーセキュリティや低炭素化といった社会課題の解決のためには、水素の大規模サプライチェーン構築が重要と考え ており、水素の受入・配送・利用に関係する民間企業との業界活動(=中部圏水素利用協議会)を主導するほか、水素を積極的に利活用する事で 水素社会実現を牽引する事が使命であると考えている。
自家発電設備のカーボンニュートラル
トヨタ自動車は、2035年工場カーボンニュートラル実現のため、工場CO₂排出のうち、電気によるCO₂は再エネで、都市ガス等の熱による CO₂は水素の利活用により削減を目指している。熱によるCO₂排出の内訳は、自家発電設備によるCO₂排出量が全体の35%を占めており、自 家発電設備からのCO₂排出削減は大きな課題である。現在、稼働しているコージェネは2005年~2012年に導入したガスエンジンが主体と なっており、稼働時間を考慮すると2030~40年頃に設備更新時期を迎えるが、カーボンニュートラル目標達成には、都市ガスを燃料としたコー ジェネが導入できなくなる可能性がある。その場合に、水素を燃料とするコージェネを計画・運転・保全する技術・技能を、社内で保有しておき、 各メーカーが水素コージェネを本格的に市場投入した段階で、速やかに適応できる準備を進めておく事が重要と考えている。水素を燃料とする コージェネ導入においては、以下を課題とした。
先進的な廃水素利用システムの構築
車載FCを活用した導入コスト低減
低温排熱を徹底的に利用
スマートEMS
災害時の対応