先進事例

コージェネ大賞2023 理事長賞

水素を有効活用したコージェネによる工場CO₂ゼロチャレンジ
~トヨタ自動車本社工場への導入事例~

愛知県豊田市|
トヨタ自動車株式会社
株式会社大林組

概 要

トヨタ自動車では、生産設備の最適化やエネルギー効率の向上により工場のエネルギー消費量を徹底的に削減するとともに、再生可能エネルギーの導入と水素の有効利用により、「工場CO₂ゼロチャレンジ」というアクションプランを通して2035年にすべての生産拠点でカーボンニュートラル達成を目指している。
その中で、本プロジェクトでは、燃料電池自動車(以下FCEV)向けの燃料電池スタック等を生産している本社工場パワートレーン3号館において、水素混焼ガスエンジンと燃料電池の2種のコージェネを導入し、廃水素と排熱を適材適所で使い分けながら有効活用するとともに、コージェネ排熱を温熱だけでなく冷熱としても徹底的に利用する先進的なシステムの構築を実現した。
本プロジェクトを通して、「水素社会実現に向けた仲間づくり」と「水素利活用技術・技能の手の内化」を図りながら本成果を他の工場に横展開するとともに、他事業者の生産拠点のカーボンニュートラル達成に貢献できるよう「水素発電パーク」として見学者を積極的に受け入れている。

清水建設北陸支店新社屋
原動機等の種類 ガスエンジン、燃料電池
定格発電出力・台数 400kW×1台
100kW×1台
排熱利用用途 空調
燃料 都市ガス・水素、水素
逆潮流の有無 無し
運用開始 2022年4月、2021年1月
延床面積 69,486m²
一次エネルギー
削減率
32.1%

コージェネが供給できる電力・熱を商用系統から給電・熱源機から熱供給 した場合と比較した時のエネルギー削減率

導入経緯

需要拡大による水素社会実現の牽引
トヨタ自動車は、エネルギーセキュリティや低炭素化といった社会課題の解決のためには、水素の大規模サプライチェーン構築が重要と考え ており、水素の受入・配送・利用に関係する民間企業との業界活動(=中部圏水素利用協議会)を主導するほか、水素を積極的に利活用する事で 水素社会実現を牽引する事が使命であると考えている。

自家発電設備のカーボンニュートラル
トヨタ自動車は、2035年工場カーボンニュートラル実現のため、工場CO₂排出のうち、電気によるCO₂は再エネで、都市ガス等の熱による CO₂は水素の利活用により削減を目指している。熱によるCO₂排出の内訳は、自家発電設備によるCO₂排出量が全体の35%を占めており、自 家発電設備からのCO₂排出削減は大きな課題である。現在、稼働しているコージェネは2005年~2012年に導入したガスエンジンが主体と なっており、稼働時間を考慮すると2030~40年頃に設備更新時期を迎えるが、カーボンニュートラル目標達成には、都市ガスを燃料としたコー ジェネが導入できなくなる可能性がある。その場合に、水素を燃料とするコージェネを計画・運転・保全する技術・技能を、社内で保有しておき、 各メーカーが水素コージェネを本格的に市場投入した段階で、速やかに適応できる準備を進めておく事が重要と考えている。水素を燃料とする コージェネ導入においては、以下を課題とした。

  • 課題1 水素発電の燃料費低減
  • 課題2 水素発電の機器コスト低減
  • 課題3 水素発電の低温排熱利用
  • 課題4 複数の機器/燃料を効率良く運用できる仕組み
  • 課題5 災害時の早期復旧や社会貢献に向けた取り組み

特 長

先進的な廃水素利用システムの構築

  • 燃料電池スタックの生産工程で水素を消費しており、供給元である液化水素プラントから発生する廃水素を回収し、燃料として有効利用するシステムを構築。
  • 本システムは、都市ガス、水素、廃水素の3種から選択し、状況に応じ柔軟に組合せ運用可能。
  • コージェネは、都市ガス・水素混焼ガスエンジンと燃料電池を導入。
  • 液化水素プラントから発生する廃水素をタンクに回収。液化水素の気化等に伴う圧力を利用することで、昇圧が不要。
  • タンク残量に応じて水素混焼ガスエンジンの混焼率を制御。常時約30Nm³/hの廃水素を回収、コージェネで約40kWの発電が継続的に可能。

車載FCを活用した導入コスト低減

  • 過渡期においては、機器コストが課題であることから、FCEVのFCモジュールを流用して安価な車載FC発電機(モノジェネ)を製造し、システムに導入。コージェネモデルも開発済み。

低温排熱を徹底的に利用

  • 生産工程の省エネが進み蒸気負荷が低下傾向で、水素混焼ガスエンジンの排熱を蒸気として取り出しても有効活用が難しいため、FC低温排熱と共に、温水として近接するビルの外調機熱源に利用。
  • 夏期は、新たに開発した吸着式冷凍機に低温排熱を投入し、水素管理棟の冷房に利用。

スマートEMS

  • FCや水素混焼ガスエンジン等の併用運用最適化のためスマートEMSを開発。電力や熱の需要に応じたシステムの制御にあたっては、環境、経済性、水素利用量等の項目について、優先する項目をフレキシブルに変更できることを重視。将来、優先順位付けが変更されても対応可能。

災害時の対応

  • 都市ガスと水素で燃料が二重化されており、レジリエンスを確保。都市ガスは、中圧A供給。水素は、液化水素で約12万Nm³保有しており、コージェネを1か月運転可能。
  • 併設する水素ステーションでFCEVやFCバスに水素を充填し、豊田市内115か所の避難所にて、車両の外部給電機能で電気を供給する仕組みを豊田市と構築。非常用電源と接続されており、停電時でも水素充填が可能。
特長
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