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「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略(仮称)(案)」に対する意見を提出しました。

「パリ協定長期成長戦略懇談会」の提言を踏まえ政府が取りまとめた「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略案」が公開され、パブリックコメントを募集しておりました。
これに対し、コージェネ財団として意見を提出しました。

意見書:「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略(仮称)(案)」に対する意見

パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略(仮称)(案)に対する意見募集担当様

[意見]

今般発表された「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略(仮称)(案)」について、コージェネレーションを含む分散型エネルギーの意義を評価した内容に賛同する。
最終到達点としての「脱炭素社会」を掲げ、今世紀後半のできるだけ早期に実現するとともに、2050年までに80%の削減達成に向けてあらゆる選択肢を追求するビジョンを掲げるなか、エネルギー転換・脱炭素化を進めるため、ネットワークを含めた分散型エネルギーシステムを推進していく方針が示されたものと受け止めている。併せて、環境だけでなく経済、社会にも貢献しSDGsの達成を目指すこと、環境と成長の好循環をビジネス主導で導くこと、地域循環共生圏の創造により活力ある持続可能な地域社会を目指すことなど、我が国が持続可能な社会を構築する上でのビジョンが示され、分散型エネルギーシステムのその一役を担うことが示されたことを歓迎する。
ついては、今後の戦略の着実な具現化へ向けて以下を提起する。

該当箇所

(1)19ページ25行目:

意 見

再生可能エネルギー、蓄電池だけでなく「コージェネレーション」を追記いただきたい。

理 由

当該文章では、分散型エネルギーについて、「熱の効率的利用を始めとする省エネルギーの推進」、「エネルギーシステムの強靭化」に貢献するとの記載があり、それらの目的を達成する技術の例示としてコージェネが相応しいと考えるため。特に、前者「熱の効率的利用を始めとする省エネルギーの推進」に対しては、再エネ、蓄電池の例示は必ずしも適切でないと考えられ、コージェネレーションを例示すべきと考える。

該当箇所

(2)20ページ7行目:

意 見

産業部門における省エネについて、未利用熱の徹底的な活用に加えて、「コージェネレーションによる熱の効率的利用」の文言を加えていただきたい。

理 由

21ページ20行目以降に、現状認識として、産業部門は高温の熱利用によって発生する大量のCO2排出の存在及びそれらは容易にCO2フリー電力によって置き換えられないことが記載されており、それに呼応する内容として本文があると考える。一方で、2018年7月策定の第5次エネルギー基本計画においては、69ページに「主に高温域を占める産業用に関しては、製造プロセス技術開発、省エネルギー設備の導入促進、コージェネレーションの利用や廃熱のカスケード利用促進を行うことが重要」とあり、産業用高温熱分野でのコージェネ活用が重視されている。廃熱のカスケード利用についても、コージェネは蒸気、温水など温度レベルに応じて実施しているところであり、エネルギー基本計画との整合性の意味でも記載すべきと考える。なお、米国の長期戦略”United States Mid-Century Strategy for Deep Decarbonization”(以下のURL参照) においては「今日、産業用CHPは天然ガスを燃料とするものがほとんどであるが、CHPは低炭素な燃料と排熱を利用することにより、脱炭素化の深化に寄与する」との記載があることも付記しておく。

https://unfccc.int/process/the-paris-agreement/long-term-strategies

https://unfccc.int/files/focus/long-term_strategies/application/pdf/mid_century_strategy_report-final_red.pdf

<原文抜粋(65ページ)>
Although most industrial CHP today is fueled by natural gas, CHP can contribute to the deep decarbonization of the industrial sector to the extent that waste heat or low carbon fuels are used.

該当箇所

(3)35ページ34~37行目および41ページ4~6行目:

意 見

荒廃農地活用や耕作放棄地の活用だけでなく、「森林の間伐材伐採を通じて、林地の維持を図るとともに、バイオマスを利用した熱供給や熱電併給を通じて林業の収入を確保し、地域の活性化を図る」等の文言を加えていただきたい。

理 由

本項は農山漁村の将来ビジョンについて記載する箇所であり、林業への具体的方策についても記載すべきと考える。SDGsのゴールには「15.陸の豊かさも守ろう」で森林の持続可能な管理等を目指すとあり、林業を通じ森林を維持していくことは、国土の大半を森林で占める我が国において非常に重要である。しかしながら、間伐材の伐採等で多くの作業が発生し森林の荒廃や地方の疲弊が懸念されているところであり、エネルギーを通じた地方の発展、環境と成長の好循環、持続可能な森林構築の効果を踏まえ、記載いただきたい。

該当箇所

(4)35ページ34~37行目および41ページ20~22行目:

意 見

「家畜排泄物の発酵によるバイオガス発電や糞尿処理、並びに副産物の液肥、堆肥利用、排熱による温室栽培等を推進し、畜産業の発展を図る」等の文言を加えていただきたい。

理 由

畜産業に関しては温室効果ガスの排出抑制に加えて、持続可能な畜産業の構築、廃棄物の地域循環共生、エネルギーを通じた地域産業の創出の面で、バイオマスエネルギーの活用も重要と考えるため。

該当箇所

(5)36ページ30行目:

意 見

太陽光発電の発電にあわせて需給調整に活用するものとして、電動車、ヒートポンプ式給湯器に、「燃料電池」を加えていただきたい。

理 由

燃料電池につき、16ページ9行目以降に、「長期的には水素・燃料電池といった次世代の調整力を活用」との表現もあり、燃料電池及びコージェネレーションも需給調整に貢献できると考えるため。

該当箇所

(6)39ページ3行目:

意 見

「災害時にも地域の再生可能エネルギー等の自立的な電源の活用を可能にするよう」とあるが、再生可能エネルギーだけでなく「コージェネレーション」を加えていただきたい。

理 由

対象箇所の前文である38ページ30~31行には「分散型エネルギーシステムは、省エネルギーの推進や再生可能エネルギーの普及拡大に加え」との文言があり、該当箇所についても再生可能エネルギーだけでなく、省エネルギーの推進に資する分散型エネルギーシステムの例示もあるべきため。

該当箇所

(7)39ページ14~16行目:

意 見

「蓄熱式空調設備、給湯需要の大きい施設におけるヒートポンプ式給湯器、冷凍冷蔵倉庫、上下水道施設、大型建築物が有している非常用自家用発電機等が需給調整に貢献する可能性を追求する。」の中に、「燃料電池及びコージェネレーション」も加えていただきたい。

理 由

燃料電池について、16ページ9行目以降に、「長期的には水素・燃料電池といった次世代の調整力を活用」との表現もあること、コージェネについて、現状でも欧米でその起動性と制御性から調整力として市場で活用されていることから、燃料電池及びコージェネレーションも需給調整に貢献できると考えるため。

該当箇所

(8)40ページ2行目:

意 見

「都市においては、人口減少・少子高齢化、インフラの老朽化等の課題に対処」とあるが、列挙する課題の中に「強靭化」を加えていただきたい。

理 由

都市においては、自然災害や停電等が発生した際の被害は甚大であり、防災や被災時の対策がインフラやエネルギーの面で重要であると考える。また、同ページの23行目に「防災機能の向上」との記載があり、その意義を明らかにする上でも望ましい。

該当箇所

(9)40ページ10行目:

意 見

未利用の再生可能エネルギー熱に加え、「都市排熱、コージェネ排熱」を加えていただきたい。

理 由

都市のコンパクト化により熱源や熱の需要が集約される場合には都市排熱、コージェネ排熱の利用可能性もより高まると考えるため。また、第5次エネルギー基本計画においても、69ページに「熱供給事業に関するシステム改革により熱電一体型の熱供給を行う環境整備が進んだことを踏まえ、コージェネレーションや廃熱などのエネルギーを一定の地域で面的に利用する、地産地消型でのエネルギーの面的利用を推進する」とあり、この内容とも整合するため。

該当箇所

(10)60ページ30行目:

意 見

制御性の高い分散型エネルギーリソースとして、定置用蓄電池に、「分散型発電設備」を加えていただきたい。

理 由

コージェネについては、現状でも欧米でその起動性と制御性から調整力として市場で活用されていること、燃料電池については、16ページ9行目以降に、「長期的には水素・燃料電池といった次世代の調整力を活用」との表現もある。燃料電池及びコージェネレーションも需要側の調整力のポテンシャルとして期待できるものであり、これらについても普及のためには更なる低コスト化が必要と考えられるため。

該当箇所

(11)61ページ7行目:

意 見

分散・デジタル制御技術として、火力発電(水素発電)に「・分散発電(燃料電池、コージェネレーション)」を加えていただきたい

理 由

コージェネについて、現状でも欧米でその起動性と制御性から調整力として市場で活用されていること、燃料電池について、16ページ9行目以降に、「長期的には水素・燃料電池といった次世代の調整力を活用」との表現もあることから、集中型の火力発電に加えて、燃料電池、コージェネレーション等の分散発電も出力調整として期待できると考えられるため。

該当箇所

(12)61ページ8行目:

意 見

分散・デジタル制御技術として、AI・IoTに「IoE」を加えていただきたい。

理 由

本項において、分散・デジタル制御技術について進めるべき個別の技術例を記載しているものと理解しているが、「再生可能エネルギー導入可能量の大幅増大に資する技術の確立」(60ページ35行目~)のためには、各種の技術をシステム化し統合的に制御すること、更にはシステム間を連携するシステム・オブ・システムズの考えが重要である。実際、本文中、「ビジョンに向けた施策の方向性(省エネルギー/分散型エネルギーシステム)」において、19ページ26~27行目に「パワーエレクトロニクス技術等による高度なエネルギーマネージメント技術を組み合わせた分散型エネルギーシステム(IoE:Internet of Energy)の構築は、熱の効率的利用を始めとする省エネルギーの推進や再生可能エネルギーの普及拡大に加え、エネルギー供給構造の効率化、エネルギーシステムの強靭化に貢献する取り組みとして重要となる」との記載がある。個別技術だけでなくシステム化、統合化技術の重要性を明らかにするためにも、IoEの構築についても記載すべきと考えるものである。

以 上